2013年4月3日水曜日

タクシーで30分


登山月刊誌の案内コーナーです。

   谷川岳へのアクセス  タクシーを利用すれば大幅に歩行時間を短縮できる。行きはJR上越線水上駅からタクシー30分でマチガ沢出合まで入れる。 (山と渓谷社)

この案内は読者のニーズに応えていません。勉強不足です。利用者が知りたいのは、所要時間だけではありません。私はタクシーでいくとなるといくらかかるのだろうかと気になります。同じ出版社の単行本では料金も書いてありますから、ライターの違いでしょう。

伊吹山へのアクセス  タクシー=近江長岡駅~三之宮神社(所要約15分、
1600円)(『関西周辺の山』山と渓谷社


旅行ガイドもユーザー・フレンドリーなものもあります。

    After you've strolled around Ebisugawa, hop in a taxi and head over to the Kyoto Handicraft Center15 minutes and about 800 yen away.(夷川を散策したら、タクシーに乗って京都工芸館へ向かいましょう。15分、約800円分の距離です)  The Japan Times Online
 
 

タクシーで15分の距離は歩くと疲れます。それでタクシーを勧めています。そしてその料金まで。これでおおいばりで、右手を挙げて「ヘイ、タクシー!」と叫ぶことができます。嬉しいですね。(これは2004年の案内ですからタクシー料金は上がっているでしょう。この点が情報誌の泣き所です。)
 
 サービスする側として、わかりやすさを心得るということは、相手が何を求めているのかを正しく理解することだといえます。

 

2013年4月1日月曜日

石碑


東京は有楽町に『君の名は』を記念して菊田一夫の「数寄屋橋 此処にありき」の碑
文が立っているそうです。いったい日本全国に碑文、石碑はいくつくらいあるのでし
ょうか(と強引に話を変えます。)石碑は何かを記念して建てられたもので、ランド
マークでもあり、観光地では多くの人がカメラにおさめたりします。

  私は殊に石碑に興味を覚えた。江戸時代のもの、または高名な文人の生誕の地や
  終焉の地の碑、由来を読んでいると、遠ことではなく、身近に感じられるのであ
  る。



          
とはある愛好家の弁です。
これが普通の人の気持ちでしょう。しかし、各地で競っ建てられる詩歌の石碑に対して、反骨の歌人浅野英治は叫びます。


   石が言うのよ お前も背や胸に文字を彫ってみな 冷たい 夜だねえ 


こう冷ややかに言われて初めて、歌碑を喜ぶのは俗人であることに私は思い至ります。人間の奢(おご)りを知ります。石を悲しませるほど俗人の精神は乾いているのでしょう。歌を詠む人には石の悲しみさえ聞こえてくるとは恐れいります。