藤本義一さんは「何故大阪は〝引ったくり″ナンバー1なのか」
と問われてこう答えます。
分割されて多い。ひとつの区の面積が小さい。だから所轄署が
多い。引ったくった犯人が直ぐに他の区に潜入することが出来る。
また区と区の境界の部分に街灯が少ないから、容易に逃走する
ことも出来る。被害届が出た署とは違う所轄に犯人は素早く
逃走する可能性があり、手配されるものの後手になってしまう。
(藤本義一『人生はいつも始発駅』)
さてこの談話が記事として掲載されて藤本さんはハタと気づいたそうです。
「考えてみると、これは犯行を促していることになりそうだ。大阪市内は
引ったくり天国だといっているのと同じである」と。
私たちは自分の真摯な思いを文章につづり、真摯に話をして、
相手とコミュニケートしているのですが、読む人聞く人がそれを
100%間違いなく理解してくれることはない、
と諦めたほうがよいのでしょう。なぜ思いが素直に伝わらないのか、
その原因は星の数ほど考えられます。表現力不足、知識不足、
話す態度、心に余裕があるかないか、聞き手の精神状態、
聞き手の無関心、鈍感さなどなど。
藤本義一さんが「何故大阪は〝引ったくり″ナンバー1なのか」
の理由を正確に語れば語るほどそれは、
引ったくりの「詳しいガイド」となり、
真面目に語れば語るほど聞き手のニヤニヤ度が増していきます。
これも物書きの業でしょうか。
追記:(1)引ったくりは34年間連続ワーストで、街頭犯罪件数でも
ワーストだった大阪が、2010年に11年ぶりに脱したそうです。
不名誉のワーストは東京都。ただしこれは認知件数なので、実数は不明。
(2) 大阪市の区が小さく24に分割されているが、これを5~9区の特別区に
再編成する案が日本維新の会代表の橋本徹大阪市長が検討中と分かった。
京都新聞2012.11.2)
藤本義一さんがお亡くなりになりました。 合掌
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