小椋佳が作詞作曲し布施明が歌って1975年(昭和50年)に
大ヒットした歌謡曲が「シクラメンのかほり」。
小椋佳自身は「技巧に走り過ぎていやになった曲」だと述懐した。
そしてこの歌詞の多くを北原白秋の詩集からとったと明かしていた。
例えば、「清しい」はそのまま拝借。
「季節が頬を染めて」は「十月が頬を染めて」が元の詩。出だしの「真綿色したシクラメンほど清しいものはない」は
エルビス・プレスリーの歌で
「朝のマリーほど美しいものはない、夜のマリーほど美しいものはない」
から借りたという。
この楽屋話を聞いて、ファンの心境やいかに。
名歌の寄せ集めのパッチワークだったのかとがっかりするか。でもがっかりする前に振り返ってみると、
白秋の詩集は、私でも秋の窓辺で開いたことがある。
けれども、詩集全6巻をぼろぼろになるまで読み返しはしなかった。
小椋佳はそこまで夢中になった。そしてその詩歌が琴線に触れた。
その新鮮さに打たれた言葉を使ってみたくなったに違いない。そこが凡人と違う。
そして何よりも「本歌取り」は文芸の常套手段であり、
古典の素養なしにはできない技なのだから。
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