昔々、榎本健一という喜劇役者がいた。
多くの偉人と同じように彼も愛称で親しまれた。
その大スター、エノケンが我が町に来るというので大騒動。
大枚はたいて楽しみにしていたら、
舞台に現れたのはエノケンではない!
興業主に問いただすと、看板をよく見ろという。
目を大きくして見るとエノケソ来たる!とある。
エノケンではなくエノケソ。
看板に偽りはなく、エノケンと読み間違えたほうが悪い。
ひっかかったほうがあほう。
泣くに泣けない話だがこのような被害に会ったときに
「それはエノケソだよ」という。
この「エノケソ魂」は大物アーティストにも受け継がれ
現代でも脈々と息づいているのは喜ばしい。
1999年11月30日、12月1、2日に、パシフィコ横浜国立大ホールで
桑田佳祐が放ったAct Against AIDSコンサートが
『エリック・クラプトソ横浜公演』だった。
現代の怪人たけしが出した本が
『ビートたけしのウソップ物語』だが、これは駄洒落というべきか。
もうひとつのエノケソ話。時は1937年(昭和12年)、
ブルーマウンテンが初めて日本に輸入されたとき、
その宣伝文句が『英国皇室御用達』。イギリス女王陛下も
ご愛飲となれば天下一品。ブルーマウンテンは値段も最高、評判も上々となった。
さてこの話のどこにエノケソが潜んでいるか。
英国に王室はあるが、皇室はない。
この手のエノケソ商売にひっかからぬようご用心、ご用心。
注(1) 遠藤周作『わたしが・棄てた・女』にこのエノケソの
「インチキでよごれたチラシ」をまくアルバイトの話が出てくる。(2) 他には柳家銀吾楼、笠置シズコなどもある。
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