2012年11月26日月曜日

掘り出し物


本を読む楽しさは自分と違う価値観に出会うこともその一つ。

 
  授業中、学生たちは寝ている。教壇からだと、それがよくわかる。
  忌々しいが、しょうがない。僕の授業が退屈なんだから。しかし
  決して安くない授業料を払っているのにもったいないと思う。
  ぼくの授業が退屈なら、「もっと面白くしろ」と要求すればいいのに。
   (中略)
  有料の講演会でも寝ている人がいるのは不思議だ。わざわざお金を
  払ってまで眠ることはないだろう。
              (永江朗『広辞苑の中の掘り出し日本語』)

 

「『もっと面白くしろ』と要求すればいいのに」なんて、
永江先生は分かっていらっしゃらない。
面白くなったらせっかくの心地よい居眠り時間がフイになってしまう。

京都のある主婦は、歌舞伎を見に行くのを楽しみにしている。
いつも夫が車で送迎役をいとわずにしてくれる。その理由が「歌舞伎は睡眠薬になる」。

 授業のおもしろさと居眠り(非礼かどうかは置いておいて)、
安くはない歌舞伎鑑賞料金を払っての睡眠、
ナントカ5つ★のレストランでの食事、
シルクロードを歩く過酷な」ツアー、
何が貴重かは個人の価値観による。

さらに、さまざまな危険を回避できる快適な日常生活は
「決して安くない」お金で手に入れるもの。
生涯独身を楽しんだ淀川長治さんもそれが分かっていたから、
ずっとホテル住まいだった。
イザヤ・ベンダサンもそんなことを言っていたはず。

不眠症で悩む人にとって、睡眠を確保できる高名な知識人の講演は
なにより得難い掘り出し物。それを理解してくださいな、センセイ。


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