2013年3月16日土曜日

アメリカ

 「カナダはアメリカのどこ?」

こう質問されてあなたは何と答えますか。「ってやんでぇ。カナダとアメリカは別々の国に決まってらぁ」と答えた人は、ちょっとおっちょこちょいの江戸っ子派。

「カナダはね、合衆国の北にあります」と答えた人は知的穏健派。

まず知っておかなければならないことは、アメリカ (America)は米国でもあり米国ではないということです。

この事情をハイディー・矢野さんは次のよう説明しています。

  “Mr. Ito, this is Mr. smith. He came from America.”

これはおかしい言い方です。日本では「アメリカ」は合衆国を指しますが、
America はカナダ、合衆国、南米も含みます。だから合衆国は the States というのがよいのです。

アメリカは米国にあらず、というわけです。
 
 

こんな話があります。カナダのカルガリー大学で経営学を専攻しているジェフさんが初めて日本に来て、とまどうことしきり。次は10日間そのジェフをホームステイさせた大学教授の後日談。 

   「カナダはアメリカのどこ?」と妻のお謡の仲間が尋ねるほどの異文化の国に来たのだから、ストレスもたまろうというものである。カナダを米国の1都市、あるいは州と思っているらしい謡の仲間は論外にしても、「America=米国」の図式しかないひとは案外多いのかもしれない。

こういうことに無頓着だから、合衆国以外の「アメリカ」の人が怒ります。

「アメリカとはアメリカ大陸全体のことであって、合衆国だけをアメリカと呼ぶのは我慢できない」(ガルシア・マルケス)

マルケスが怒るのもむべなるかな。

ところで表記法について。本多勝一のルポルタージュに『アメリカ合州国』があります。「合衆国」ではなく「合州国」を用いた理由を彼は次のように述べています。

   これはきわめて単純なことであって、The United States of America をそのまま訳せば、こうなるからです。なぜStates が「衆」と訳されたのでしょうか。

さらに、「私としては、日本語として定着した「合衆国」を「合州国」に変更してやろうといった野心があるわけではなく、これはこの本のための個人的趣味に過ぎません」とも述べています。同書の巻末に近代訳語の成立事情にくわしい大妻女子大の広田栄太郎教授の調査結果が掲載されています。教授は「『合衆国』という語は中国出来のようです。中国語にもいろいろな訳語があったようですが、「合衆国」もその一つです。直訳というよりは、合衆国共治国(=共和国)の略と考えられる意訳でしょう」と述べている。

もうひとつ関連して新聞記事から引用しておきます。

    米国に「合衆国」と漢字をあてたのは、米国自身だったという説が有力だ。中国の清朝と条約を締結した時、条約の中で自らを「合州国」(United States)ではなく「合衆国」と記した。(朝日新聞

 英和辞典では『ジーニアス』が「アメリカ合衆国[合州国]」と記しています。

 

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