2012年12月3日月曜日

カンザス (Kansas)


  "Toto, I have a feeling we're not in Kansas anymore." 
      (トト、ここはもうカンザスじゃあないみたいよ)
映画好きの人には誰の言葉か分かったのではないでしょうか。あの名画
The Wizard of Oz『オズの魔法使い』のドロシーが愛犬トトに言う台詞です。
諺というほどの歴史の重みはありませんが、この映画が製作されたのが
1939年だから既に半世紀以上も親しまれてきたことになります。


さて何でもないようなこの台詞にアメリカ人は大喜びするそうです。日本
人には理解しがたいのですが、例えば、田舎から都会へ出て来て
新宿のケバケバしさにビックリ仰天している相棒に、
「おい、ここはもう青森じゃないんだから」と自嘲的に言っている場面を
想像すれば少しは分かるのではないでしょうか(青森の方すみません)。

 この言葉がどの程度アメリカ人にpopular なのかは知りませんが、
あの怖い『羊たちの沈黙』 The Silence of the Lambs の翻訳を
読んでいたらちゃんと出ていました。

 「さあ、トト、ここはもうキャンザスじゃないんだよ」ストレスを
 感じている時はいつもそう言いたかったが、いざ口にすると
 なにかまやかしじみた気分がし、今、誰にも聞かれなくてよかった
 と思った。           (菊池光訳 新潮文庫)

FBI の訓練生クラリスはこの言葉を「しっかりしなくちゃ」くらいの
意味で口癖にしているのかもしれません。

他にはトミー・リー・ジョーンズ主演の映画『ボルケーノ (Volcano)』でも
字幕に「もうここはカンザスではないのよ」とありました。

映画や小説の中の何気ない言葉にこんな掘り出し物を見つけると
嬉しくなりませんか。なお、表題の言葉については
マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』(岩波新書pp.37-43)に
詳しく出ています。一読をお薦めします。
 
 

1 件のコメント:

  1. 羊たちの沈黙(新潮文庫)を読んでいて気になった言葉だったので調べて見たが、調べて正解だった。
    このようなブログにあえて感謝している。

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