「起こされた」を使って文を作りなさい、と言われたらどのような文を思いつくだろうか。「真夜中に間違い電話に起こされた。」あたりが平均的解答だろう。だから次のような使い方にはハッとさせらる。
事故は、ことし1月7日に起こされた。歩いていた女の子二人と母親が、歩道に乗り上げて暴走してきた乗用車にはねられた。子どもの一人の体は、そばの信号機よりも高く舞い上がった。みんな、ほぼ、即死状態だった。(『天声人語』1996年9月10日)
林さんは四月二十五日朝、同志社大京田辺キャンパスに向かうため、事故を起こした電車の一両目に乗車。(京都新聞)
英語の慣用表現に Accidents will happen. (事故は起こるものだ) があり、高校生なら「習性の will 」として1度は出会ったことがあるはずだ。なるほど日英ともに「事故が起こった」が普通の表現だが、「事故が起こされた」と言われて初めて「交通事故は誰かが起こす」のだと気づかされる。英文でも「起こる」と「起こされた」の両方のいいかたをする。
The accident happened where the road branches.
(事故は道路が枝分かれしている所で起こった) (OALD)
The crash occurred shortly after 6 a.m. (衝突事故は午前6時過ぎに起こった) (CNN)
This incident was started by a deranged individual
who was suicidal.
(この事故は精神が錯乱した男によって起こされた) (CNN)
The crash was an accident caused by the drunk and speeding
driver. (衝突事故は飲酒してスピードを出しすぎた運転手によって起こされた事故であった)(USATODAY)
交通事故は、地震のように「起こる」のではない、「起こされる」のだ。誰かによって起こされるのであれば防ぐこともできるはずだ。このように言われてやっと物事の本質が見えてくるとは情けない、と悲観的になるより、こういう物言いができるようなものの見方を身につけなくてはいけないとあらためて自覚する。
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