2013年1月4日金曜日

黒猫


黒猫と聞いて E. A. Poe The Black Cat を真っ先に思い浮かべた人は
読書の愉しみを知っている人に違いない。推理物だから内容は言えないが、
お調子に乗って自慢しなければ身の破滅となることはなかっただろうに、
と主人公に同情を禁じざるを得ない内容とだけ言っておこうか。

 

映画通は、自動車レース中に黒猫が現れたのでレースが中止になった、
というセリフのある『男と女』(A Man And A Woman)を
思ったにちがいない。



南佳孝の歌に『黒猫 CHAT NOIR』がある。一緒に暮らし始めたが
いつしか消えてしまう女のことだ。

 

黒猫は不吉なのだろうか。

 

ドイツのワイン Zeller Schwarzwer Katz (ツェラーシュワルツカッツ) の味が
喉元によみがえってくる人はワイン通といってよい(かもしれない)。
このワインのラベルに描かれている黒猫を主人公に一篇の小品を書いたら
これしか考えられないと思われるのが

 Friedrich Hollaender (フリードリッヒ・ホレンダー)
『ペーター,ペーター,戻ってきて』 (Peter,Peter, komm zu mir zurück! )

といってもこれは小説ではなくその昔キャバレーで流行った唄。
マリーネ・デートリッヒの持ち唄だったという。
その内容をかいつまむと。

 

私がいつものように、パンと紅茶と蜂蜜の朝食をとりながら
新聞を読んでいたら、広告記事がでている。

 

ペーター、ペーター、戻ってきて!

ペーター、ペーター、最愛の(ひと)

ペーター、ペーター、私が悪かったの!

後になってやっとそれが判ったの!

 

この広告主はどんな女だろう。ペーターはどこにいるのだろう。広告主の

家まで出かけて行った。出てきたブロンドの女に、ペーターって誰なの?

 あなたの兄弟、恋人、それとも父親? と私が尋ねると、ブロンドが大笑

いして答えた。「私のかわいい黒猫よ。昨夜家出しちゃったの」。

 
この小話にネルゾン (Rudolf Nelson) が曲をつけた。
キャバレーで個性の強い歌姫が歌い、酔った男たちが歓声をあげ、
酔いしれる。そんな光景が浮かぶ。
現代ではウテ・レンパー (Ute Lemper) の歌で聞ける
CD『キャバレーソング』が出ている。  






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