2012年9月28日金曜日

日本語の「  」は一字一句たがわず伝えるのか(1)   


日本語では「 」で人の言葉を引用しますが、
その引用された言葉遣いは一字一句そっくりそのままではありません。
むしろ伝達者が適当に変えることがふつうです。
 
井上ひさしさんが取材をかねて横浜中華街を訪れると、
大学生の「盛り場研究会」が「ここのどんなところが、あなたの気に入っていますか」
というアンケートをとっている。
それで井上さんはこれまでの集計結果を見せてほしいと頼みます。

  「飯店の佛跳牆(フォテユチャ)という料理をご馳走してくれるなら」ということで話がまとまった。(井上ひさし『ニホン語日記』)


まさかその大学生が「某飯店」と言ったはずはなく、店名を告げたはずです。
それを井上さんは固有名詞を避け「某」としたのです。
この例のような言い換えは常套手段ですから、人の発言を孫引きするときは要注意です。

 

次は新聞の読者投稿です。

   四条京阪へ行くと、
     「守口で人身事故があり、お急ぎのところ申し訳ない
      と何遍もアナウンス。   (京都新聞

これが駅のアナウンスそのままのはずがありません。
利用客は「申し訳ない」とはなんて誠意のない謝罪だ、と憤慨したでしょう。
実際には「申し訳ございません」だったに違いありません。
 
引用はこのように引用者の都合で書き直されるのが実情です。
 



 

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