ゾイリア共和国のゾイリア大学の教授たちが考案。
小説や絵などをその上に置いてその価値を測定する。
額縁の価値や製本の稚拙も測定されてしまうが、
それは後で修正できる。
その目的は、外国から輸入される書物や絵の中で
無価値なものは絶対に輸入を禁止するため。
こういった類で一番心配されるのは、
この測定器の判定する評価が信用できるかどうか、
その保証があるのかだが、その点は大丈夫だという。
例えばモオパッサンの『女の一生』を載せてみれば針は
最高値を指す事からも証明できるという。
日本の名歌『赤とんぼ』を中国で小澤征爾氏が披露したところ、
その歌のどこが建設的なのだ、
と価値を認めてもらえなかったというエピソードが伝えるように、
文芸作品に絶対的価値などありはしない。
だから、ゾイリアの話には矛盾がある。
『女の一生』を最高傑作と評価したいならすればよい。
しかしそう評価することがこの器械が優れていることの証明には
ならないからである。
「Aは正しい、なぜならばAはBが正しいと認めるからである」
という論理には欠陥がある。Bが正しいことをCが証明しなければ、
自己撞着となるからである。まてよ、
そのCが正しいことを今度は何が証明し得るのだろうか? ・・・・・
ゾイリアの価値測定器についてひとつ大切なことを忘れていた。
この測定器はゾイリア国の小説・絵画の価値測定をすることは
禁止されているそうである。その理由は国民がそう望んでいるから。
この話はどうも胡散臭い。
ゾイリア国とこの器械について知りたい向きは『芥川龍之介全集』をどうぞ。
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