2012年9月12日水曜日

むずかしい大家  



   むずかしい大家は絶えず札を張り

これは江戸川柳だが、「札」はどのような札なのだろうか。

解釈1:気難しい大家は文句ばかり言う。やれ、火の用心、
子供を泣かすな、井戸端はきれいに使え、音を立てるな、
戸のすきまから覗くな。そんな大家だから借家人が居つかず
いつも空家が一つ二つ。そこで「貸間有り」の札がいつも
風に吹かれている。そんな大家を店子たちがからかい半分
で笑っている。

解釈2:気難しい大家はなにかと張り紙をする。やれ、
「火の用心」「借りた金は必ず返せ」「店賃は期日払え」。
そんな張り紙を店子たちがへらへら笑いながら見ている。


 
さてどちらの解釈が正しいのだろうか。
それを決めるのは何か。

どちらも正解では勉強が足りないらしい。言葉の問題でも正しい解釈を
するための鍵はいくつかあるが、その一つにコンテクスト がある。
contextは一般に「文脈」と訳されるがもう少しわかりやすくいえば、
「それを理解するための背景知識、その言葉が発話された状況」といえよう。

 冒頭の川柳を理解するためのコンテクストは、
江戸時代の大家と店子の関係、長屋という共同社会である。
この文化的背景が具体的にどのようなものであったかは落語の
「小言幸兵衛」が教えてくれる。それによると解釈1が正解であるようだ。

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